人事1人の採用人数はどこまでが適正?「人手が足りない」時の体制の見直し方

「急に採用枠が増えたが、今の人数で回せるのか?」「人事がいつも忙しそうなのに、なぜか採用が進まない」。多くの経営者や人事責任者が抱えるこの悩み。実は、「人事1人あたり何人採用するのが正解か」という問いには、企業のフェーズや採用手法に基づいた明確な「基準」が存在します。

現場が疲弊し、採用活動が形骸化してしまう前に、データに基づいた適正なリソース配置を理解することが不可欠です。

本記事では、人事1人あたりの適正な採用人数の算出方法から、体制構築のポイント、そしてリソース不足を解消するための具体的な解決策までを網羅的に解説します。

目次

人事1人あたりの適正な採用人数と「限界値」

「人事1人が1年間に何人の採用を担当できるか」という基準を知ることは、健全な組織運営の第一歩です。しかし、この数字は単なる「頭数」だけで決まるものではありません。

採用する職種の難易度、利用する媒体、そして選考フローの重さによって大きく変動します。

一般的に、専任の採用担当者1人が1年間で無理なく対応できる採用人数は、年間20名〜30名程度と言われています。しかし、これがエンジニアなどの専門職や、ダイレクトリクルーティングを主体とする手法に変わると、その限界値は大きく下がります。

職種・手法別の採用人数の目安

以下の表は、一般的な人事リソースと採用人数の相関イメージです。

スクロールできます
採用手法・難易度人事1人あたりの年間採用目安特徴
新卒一括採用50名〜100名説明会や選考フローが定型化しやすく、大量処理が可能。
中途採用(一般職)20名〜30名媒体運用、エージェント対応、面接調整など個別対応が増える。
専門職・ハイクラス5名〜10名スカウト送信、カジュアル面談など、1人に対する工数が極めて大きい。

「人事が足りない」の正体は、1人あたりの「工数」の増大

「1人あたり30名」という数字だけを見て安心するのは危険です。近年、採用市場の激化により、以前と同じ1人を採用するために必要なアクション数(工数)が激増しています。

返信率の低下:
以前は10通で1通返ってきたスカウトが、現在は50通送らないと返ってこない。

カジュアル面談の増加:
選考前の「見極め」ではなく「口説き」の場が必要になり、拘束時間が増えた。

このように、「採用人数」は変わっていなくても、その裏側にある「採用工数」が限界を超えていることが、リソース不足の真の原因なのです。

【関連記事】忙しい人事にこそ知ってほしい!“採用工数”を削減する5つの方法

人事体制構築の基準:なぜ「兼務」では限界が来るのか?

多くのスタートアップや中小企業では、人事専任者がおらず、総務や広報、あるいは経営陣が採用を兼務しています。しかし、事業拡大のスピードが上がると、必ず「兼務の限界」が訪れます。

ここでは、フェーズごとの適正な人事体制と、兼務が抱えるリスクについて深掘りします。

企業フェーズ別・理想的な体制

組織の規模によって、人事1人が担うべき役割と適正な人数構成は変化します。自社のフェーズと照らし合わせ、リソースが不足していないか確認しましょう。

従業員数 〜30名: 経営陣または1名の兼務人事

この規模では専任を置かず、代表や役員が採用を主導するのが一般的です。

体制: 経営陣 + 事務(総務など)の兼務1名
課題: 経営陣の工数が限界に達し、選考のレスポンスが遅れがちになる。
対策: 事務作業を切り出し、経営陣が「口説き」に専念できる環境を作る。

従業員数 30〜50名: 採用専任者1名の設置を検討すべき時期

年間で10名以上の採用が継続的に発生し始めるため、兼務では限界が来るフェーズです。

体制: 採用専任者 1名
課題: 属人的な採用から、誰でも評価できる「仕組み」への移行が必要。
対策: 求人票の整備や評価基準の策定など、「採用の仕組み化」を進める。

従業員数 50〜100名:採用広報と攻めの採用の強化

認知度が課題となり、待っているだけでは応募が来なくなるため、人事の工数が激増します。

体制: 専任人事 1〜2名
課題: スカウト送信やSNS発信など、1人あたりの業務量が最大化する。
対策: ATS(採用管理システム)を導入し、テクノロジーで作業時間を削減する。

従業員数 100名以上:役割分担された人事チーム

採用だけでなく、入社後の評価や教育、労務など「組織の質」を高める役割が必要になります。

体制: 人事部門 3名以上(採用担当 + 労務・教育担当)
課題: 採用した人の早期離職や、社内制度の形骸化が起きやすくなる。
対策: 「1人あたり年間採用数30名」を上限目安とし、役割を細分化

採用担当「兼務」の限界とリスク

兼務担当者が陥る最大の罠は、「採用活動の優先順位が下がる」ことです。

レスポンスの遅延:
本業が忙しく、候補者への連絡が数日遅れる。その間に優秀な層は他社へ流れます。

PDCAが回らない:
「とりあえず求人を出す」だけで精一杯になり、なぜ応募が来ないのかの分析(改善)ができなくなります。

ミスマッチの発生:
面接準備不足により、自社に合わない人材を採用してしまうリスクが高まります。

「1人あたりの適正人数」を算出する際は、その担当者が「採用業務に何%の時間を割けるか」を厳密に見極める必要があります。

【関連記事】採用が属人化している会社が見直すべき、仕組み化の3ステップ

採用人数を最大化させる「適正人数」の算出フォーマット

自社にとっての適正人数を割り出すためには、感覚ではなく数値で「採用キャパシティ」を算出しましょう。

採用ファネルから逆算する

適正人数を算出する最も確実な方法は、自社の過去データ(採用ファネル)に基づき、1名の入社を実現するために必要な「総工数」を逆算することです。

例えば、1名の内定を出すために以下の歩留まりが発生しているケースを想定してみましょう。

  • 書類選考: 50件(1件5分 = 約4時間)
  • 1次面接: 10件(1回1.5時間 = 15時間)
  • 最終面接: 3件(1回1.5時間 = 4.5時間)
  • 内定: 1通(クロージング・条件交渉 = 約2時間)

この場合、1人を採用するだけで「25.5時間」の人事工数が発生します。もし年間20名を採用する計画であれば、面接と事務作業だけで年間510時間、月あたり42時間を費やす計算です。ここに、母集団形成のための媒体運用やスカウト送信、エージェント対応が加わるため、人事1人が実働時間の50%以上を「作業」に奪われている実態が浮き彫りになります。

この数値を経営陣と共有することで、「なぜ今の人数では回らないのか」を論理的に説明することが可能になります。

手法別の工数ウェイトを加味する

採用人数だけでなく、「どの手法をメインにするか」によって、人事1人が抱えられる限界値は大きく変わります。手法ごとの工数負荷を理解し、現在のバランスが適正かどうかを判断しましょう。

エージェント経由(工数:低〜中):
候補者のスクリーニングを外部が代行するため、人事は「書類選考」と「面接」に集中できます。ただし、紹介を促すためのエージェント訪問や情報提供など、関係性構築の工数は一定数発生します。

求人媒体Wantedly(工数:中〜高):
求人票の作成だけでなく、企業の魅力を伝えるストーリー(ブログ)の更新や、継続的な情報のアップデートが必要です。自社の認知度を自力で上げる必要があるため、コンテンツ制作の工数が重くなります。

ダイレクトリクルーティング(工数:極めて高い):
データベースからターゲットを1人ずつ選定し、プロフィールを読み込んだ上で「なぜあなたなのか」を綴るパーソナライズされたスカウトを送ります。最も成果に繋がりやすい手法ですが、1通の送付に15分〜20分かかることも珍しくなく、専任者がいないと継続が困難な手法です。

特に、知名度で劣る中小企業が優秀な層を獲得しようとする場合、工数のかかる「攻めの採用(ダイレクトリクルーティング)」の比率が高まりがちです。

手法のポートフォリオを見直し、「この工数を今の人数で背負いきれるか」を検証することが、体制構築の第一歩となります。

【関連記事】採用マーケティングとは?今、採用にマーケ思考が必要な理由

リソース不足を解消し、強い人事組織を作る

「適正人数を算出したら、明らかに今の人数では足りなかった」という場合、単純に採用担当者を増やす(正社員を雇う)ことだけが正解ではありません。

テクノロジーによる効率化(AI・ATSの活用)

現代の採用活動において、アナログな管理は「人事の時間を奪う最大の要因」です。採用管理システム(ATS)やAIツールを導入することで、単純作業を劇的に削減し、人事にしかできない「候補者との対話」に時間を割けるようになります。

一元管理によるスピードアップ:
複数の求人媒体やエージェントからの応募者を1つの画面で管理。メールのやり取りをテンプレート化・自動送信することで、候補者へのレスポンス速度が上がり、選考辞退を未然に防ぎます。

AIによるクリエイティブ業務の補助:
ゼロから作ると数時間かかる求人票や、候補者一人ひとりに合わせた「刺さるスカウト文面」をAIで生成。作成時間を50%以上削減しつつ、データの蓄積により返信率の高い文面を型化できます。

「全社採用(スクラム採用・リファラル)」の文化醸成

「採用は人事の仕事」という固定観念を捨て、現場社員を巻き込む「スクラム採用」の体制を築くことが、1人あたり工数の削減に直結します。

母集団形成の負荷分散:
現場社員にSNSでの発信(採用広報)や知人の紹介(リファラル)を促す仕組みを作ります。現場起草の紹介は、人事によるスカウトよりも内定承諾率が高く、結果として「1人を採用するために必要な総工数」が大幅に減少します。

ミスマッチの防止:
現場が求める人物像を一緒に定義し、選考段階から現場社員が登場することで、入社後のギャップを解消。短期離職が減れば、その分「欠員補充のための採用活動」という無駄なループを断ち切ることができます。

外部リソース(RPO・運用代行)の戦略的活用

「採用人数が急増する時期だけリソースを増やしたい」「専門的なノウハウが自社にない」という場合は、採用アウトソーシング(RPO)をパートナーとして迎えるのが最短ルートです。

教育コストゼロで即戦力を確保:
採用のプロが実務を代行するため、社内で担当者を育成する時間がない場合でも、導入初日から高いクオリティで運用が始まります。また、固定費(人件費)ではなくプロジェクト単位の「変動費」として扱えるため、経営上のリスクも抑えられます。

「コア業務」への集中:
スカウト送信、日程調整、エージェントへの定期連絡といった「定型業務」を外注し、自社の人事は「最終的な見極め」や「候補者の意向上げ(口説き)」といった、自社の人間にしかできないコア業務に100%集中できる体制を作ることが成功の秘訣です。

【関連記事】採用の外注活用ガイド|外注で効率化できる業務と自社で担うべき業務の境界線

まとめ|データに基づいた適正配置が採用を成功させる

人事1人あたりの適正な採用人数は、単なるノルマではありません。それは、「候補者一人ひとりと丁寧に向き合い、自社の魅力を正しく伝えられる限界値」でもあります。

「また会いたい」「もっと話したい」と思ってもらえる企業になるために、属人的ではなく組織的に面談を設計する視点を持つことが、採用競争力の強化につながります。

「人事が足りない」と感じたとき、まずは以下の3ステップを実践してみてください。

  1. 現在の採用工数を見える化する: 1名採用に何時間かかっているか。
  2. 手法を見直す: 工数に見合った成果が出ているか(無駄なスカウトや面接はないか)。
  3. 体制を再構築する: AI活用、現場の巻き込み、外部パートナーの検討。

適正なリソース管理こそが、採用競合に勝ち、自社に必要な優秀な人材を惹きつける唯一の道です。

【この記事の制作元|株式会社ルーチェについて】

株式会社ルーチェは、中小・ベンチャー企業の「採用力強化」を支援する採用アウトソーシング(RPO)カンパニーです。創業以来、IT・WEB業界を中心に、企業ごとの課題に寄り添った採用支援を行っています。

私たちが大切にしているのは、「代行」ではなく「伴走」。スカウト配信・媒体運用・応募者対応といった実務支援にとどまらず、採用計画の策定、ペルソナ設計、採用ブランディングまでを一貫してサポート。企業の中に“採用の仕組み”を残すことを目指しています。また、Wantedlyをはじめとしたダイレクトリクルーティングの運用支援や、媒体活用の内製化支援にも注力。単なる代行ではなく、社内に採用ノウハウを蓄積させながら、再現性ある成果につなげることが特徴です。

「採用がうまくいかない」「業務に手が回らない」「属人化していて引き継ぎができない」、そんなお悩みを抱える企業のご担当者さまに、私たちは“仕組み化”という選択肢をご提案しています。お気軽にご相談ください!

最新ベンチマーク集

「人手が足りない」の正体を数値で可視化。

職種別の標準的な採用工数(スカウト数・面接時間等)と自社データを比較し、体制の最適化や増員・予算交渉の根拠として活用できるベンチマーク集です。

記事をシェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次